トラックを活用して貨物を運ぶ事業を「運送業」と認識されている方も多いのではないでしょうか?実は、運送業を始めたいと思っている場合には運送業の許可が必要になります。この運送業許可には様々な種類があるため、運送業の区分について確認しつつ、どの種類の許可を取得することが良いかを確認してください。
本記事では、運送業許可の種類について解説していきます!
なお、運送業許可の「モノ」「カネ」の要件については以下の記事にて詳しく解説しておりますので、是非ご確認ください。
種類について
一般貨物自動車運送業
運送業許可の中でも代表的なものと言えるのが、「一般貨物自動車運送業」になります。不特定多数の荷主の依頼に応じて有償で貨物を運送する(※軽自動車以外のトラックなど)事業を指します。別名”緑ナンバー”と呼ばれています。「特定貨物自動車運送事業」に該当する場合は、「一般貨物自動車運送業」にあたりませのでご注意ください。
貨物自動車運送事業法 第2条
この法律において「貨物自動車運送事業」とは、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業及び貨物軽自動車運送事業をいう。
2 この法律において「一般貨物自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。次項及び第七項において同じ。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。
3 この法律において「特定貨物自動車運送事業」とは、特定の者の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業をいう。
特定貨物自動車運送事業
特定貨物自動車運送事業とは、貨物輸送の依頼主が特定の1社のみでその会社から依頼された貨物を有償で運送する事業をいいます。今後、より多くの会社と契約をして貨物の運搬をしようと考えている場合は「一般貨物自動車運送事業」の許可を取得することを推奨致します。
貨物自動車運送事業法 第2条
3 この法律において「特定貨物自動車運送事業」とは、特定の者の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業をいう。
貨物軽自動車運送事業
一般貨物の「自動車」にあてはまらなかった軽自動車や125cc以上のバイクを使用して、貨物の運送を行う事業を指します。別名“黒ナンバー”と言われています。先程例にあげた、一般/特定貨物運送事業は許可制ですが、軽貨物運送事業だけが届出制となっており、手続きが簡略化されています。
貨物自動車運送事業法 第2条
3 この法律において「特定貨物自動車運送事業」とは、特定の者の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業をいう。
4 この法律において「貨物軽自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る。)を使用して貨物を運送する事業をいう。
一般/特定貨物運送事業の許可申請について(人的要件)

一般貨物・特定貨物運送事業の許可申請において、最低でもドライバーを含む6名の人員確保が必要です。
- 運行管理者・・・1名 (トラック台数によって変動あり)
- 運転者(ドライバ)ー・・・5名以上(台数分の人員確保が必須)
- 整備管理者・・・1名(資格がある者または経験がある者)ドライバーと兼任可能
それぞれについて詳しく見ていきましょう!
運行管理者
運行管理者とは、事業用自動車の安全運行等の確保や運転者の指揮監督等を行う者を指します。法令遵守を強く求められていることからも、運転事業を営むうえで最も重要な役割を担っています。トラックの台数が29台までであれば1人以上で足りますが、以降30台を超えるごとに1人以上追加するように定められています。
運行管理者になるためには、運行管理者試験に合格する必要があります。運行管理者試験を受験するためには、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
◎事業用自動車の運行管理の実務経験が1年以上ある者
◎自動車事故対策機構が行う運行管理者基礎講習を終了している者
※運行管理者の欠格要件として、「地方運輸局長による解任命令により解任され、解任の日から2年を経過しない者」は、運行管理者となることができません
貨物自動車運送事業法(運行管理者) 第16条
一般貨物自動車運送事業者は、第三条の許可を受けた後、速やかに、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため、国土交通省令で定めるところにより、運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、運行管理者を選任しなければならない。
2 前項の運行管理者の業務の範囲は、国土交通省令で定める。
3 一般貨物自動車運送事業者は、第一項の規定により運行管理者を選任したときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、その氏名を国土交通大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
運転者(ドライバー)
ドライバーについては、運送業許可を取得するために、最低でも5名以上の事業用自動車を用意する必要があります。これは、運送事業に使用する事業用自動車は5台以上申請時に必要となることが定められているためです。そのため、車両の台数分のドライバーを申請時に確保又は確保予定である必要があります。さらに、事業で使用する自動車の運転免許を保有している必要があるため、中型の自動車免許しか所持していないものを大型トラックの運転者とすることはできませんのでご注意ください。
整備管理者

整備管理者とは、事業用自動車の点検整備の実施や点検整備記録簿の管理、車庫の管理等を行う者を指します。整備管理者になるためには、以下を満たしている必要があります。
◎資格で整備管理者になる場合
一級自動車整備士、二級自動車整備士、三級自動車整備士、
◎実務経験で整備管理者になる場合
整備工場、特定給油所、自動車運送事業者における整備要員として点検・整備業務を行った経験が2年以上あり、かつ、地方運輸局長が行う研修を修了した者であること。
★「整備の管理に関する実務経験」とは、以下のものをいいます。
① 整備管理者の経験
② 整備管理者の補助者(代務者)として車両管理業務を行った経験
③ 整備責任者として車両管理業務を行った経験
※整備管理者の欠格要件として、「地方運輸局長による解任命令により解任され、解任の日から2年を経過しない者」は、整備管理者となることができません。
道路運送車両法 第50条
自動車の使用者は、自動車の点検及び整備並びに自動車車庫の管理に関する事項を処理させるため、自動車の点検及び整備に関し特に専門的知識を必要とすると認められる車両総重量八トン以上の自動車その他の国土交通省令で定める自動車であつて国土交通省令で定める台数以上のものの使用の本拠ごとに、自動車の点検及び整備に関する実務の経験その他について国土交通省令で定める一定の要件を備える者のうちから、整備管理者を選任しなければならない。
申請者の欠格要件について
運送業許可の申請者は、個人であれば個人事業主、法人であれば法人の役員全員がいずれかに該当するとしてはいけません。該当してしまう場合は許可を取得することができません。
【欠格要件抜粋】
◎1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
◎一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から5年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日前60日以内にその法人の役員であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。)
◎営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者または成年被後見人であって、その法定代理人が上記のいずれかに該当する者
◎法人であって、その役員のうちに上記のいずれかに該当する者のあるもの
貨物自動車運送事業法 第5条 【欠格要件】
国土交通大臣は、次に掲げる場合には、第三条の許可をしてはならない。
一 許可を受けようとする者が、一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者であるとき。
二 許可を受けようとする者が、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から五年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十五条第一項の通知が到達した日(同条第三項により通知が到達したものとみなされた日を含む。)をいう。第四号において同じ。)前六十日以内にその法人の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。第六号及び第八号において同じ。)であった者で当該取消しの日から五年を経過しないものを含む。)であるとき。
三 許可を受けようとする者と密接な関係を有する者(許可を受けようとする者(法人に限る。以下この号において同じ。)の株式の所有その他の事由を通じて当該許可を受けようとする者の事業を実質的に支配し、若しくはその事業に重要な影響を与える関係にある者として国土交通省令で定めるもの(以下この号において「許可を受けようとする者の親会社等」という。)、許可を受けようとする者の親会社等が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、若しくはその事業に重要な影響を与える関係にある者として国土交通省令で定めるもの又は当該許可を受けようとする者が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、若しくはその事業に重要な影響を与える関係にある者として国土交通省令で定めるもののうち、当該許可を受けようとする者と国土交通省令で定める密接な関係を有する法人をいう。)が、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から五年を経過しない者であるとき。
四 許可を受けようとする者が、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しの処分に係る聴聞の通知が到達した日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に第三十二条(第三十五条第六項において準用する場合を含む。)の規定による事業の廃止の届出をした者(当該事業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で、当該届出の日から五年を経過しないものであるとき。
五 許可を受けようとする者が、第六十条第四項の規定による検査が行われた日から聴聞決定予定日(当該検査の結果に基づき一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しの処分に係る聴聞を行うか否かの決定をすることが見込まれる日として国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣が当該許可を受けようとする者に当該検査が行われた日から十日以内に特定の日を通知した場合における当該特定の日をいう。)までの間に第三十二条(第三十五条第六項において準用する場合を含む。)の規定による事業の廃止の届出をした者(当該事業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で、当該届出の日から五年を経過しないものであるとき。
六 第四号に規定する期間内に第三十二条(第三十五条第六項において準用する場合を含む。)の規定による事業の廃止の届出があった場合において、許可を受けようとする者が、同号の聴聞の通知が到達した日前六十日以内に当該届出に係る法人(当該事業の廃止について相当の理由がある法人を除く。)の役員であった者で、当該届出の日から五年を経過しないものであるとき。
七 許可を受けようとする者が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人が前各号(第三号を除く。)又は次号のいずれかに該当するものであるとき。
八 許可を受けようとする者が法人である場合において、その役員のうちに前各号(第三号を除く。)のいずれかに該当する者があるとき。
まとめ

今回は運送業許可の種類と許可申請時に満たす必要がある人的要件についてそれぞれ解説致しました。運送業許可を取得するためには、メインとなる貨物自動車運送事業法、道路運送法とそれにまつわる公示や施行規則の他に、都市計画法、消防法、農地法、建築基準法などが複雑に絡み合うため、これらの法律に定められた基準をクリアしなければ申請には至りません。
運送業許可に関して何かご不明な点などございましたら、専門家である行政書士までお気軽にお問い合わせください。




