運送業許可の資金に関する要件について解説!許可取得のための資金要件(お金の要件)とは?

運送業許可

トラック等の運送業(緑ナンバー)をするためには許可を取得する必要があります。正式には「一般/特定貨物自動車運送事業許可」と言います。これらの許可を取るためには、大きく分けて「人」「物」「資金」に関する基準をクリアしなければなりません。

本記事では、「資金」の要件について解説をしていきます。「資金」には、建設業許可のようにどの申請者に対しても一律に必要額が定められているのではなく、車両費や土地費など申請者個々の事業計画に沿って計算した事業開始資金を確保している必要があります!

「人」「物」に関する内容については、こちらの記事にて解説をしておりますので是非確認をしてください!

一般/特定貨物運送事業の許可申請について(資金要件)

貨物自動車運送事業経営許可申請書の「事業の開始に要する資金及び調達方法」の様式に沿って算出した資金が確保できていることを、金融機関の発行した残高証明書により証明をします。必要となる資金の種類は以下のように分けられます。

①人件費
②燃料費
③油脂費
④修繕費
⑤車両費
⑥施設購入・使用料
⑦各種税
⑧保険料
⑨登録免許税
⑩その他の費用

これらの費用を、およそ合算したものが所要資金で、これ以上の自己資金が必要になります。そして、自己資金は、運送業の許可を申請した日から、許可が出る日までの期間中継続して所要資金よりも多い状態である必要があります。いわゆる「見せ金」も禁止しています。

所要資金が許可日までに下回ってしまうと、運送業許可の取得要件を満たすことができなくなってしまうためご注意ください

所要資金の内訳

さきほど紹介した所要資金ですが、その内訳はどのようなものでしょうか。

少し細かいですが、ひとつずつ説明していきます。

人件費

人件費には、役員報酬・給与・手当・賞与・法定福利費・厚生福利費の合算額を記載します。

【役員報酬】には、役員報酬月額×役員の人数の2ヶ月分を記載します。役員報酬月額については、役員が複数人いる場合は、各々役員報酬月額が違う場合が想定されます。その場合は平均値を取って計算をします。

【給与】には、「運転者・運行管理者・整備管理者・事務員・その他従業員」別に給与(基本給)を計算し、その2ヶ月分を計上します。運転者や運行管理者が「役員」である場合には、役員報酬で計上している旨を記載していおきます。また、大型車両と中型車両の運転者毎で、異なる給与の取り扱いをする場合には、運転者全員の給与の平均値を計上します。

【手当】については、給与と同様の方法で計算をします。手当についても、平均値を取って計算をすることになります。

【賞与】については、給与月額の何ヶ月分を年に何回支給するのかを計算します。それらの金額を1/6を掛けて、記載します。

【法定福利費】には、健康保険料と厚生年金保険料と雇用保険料、労災保険料の合算額を記載します。法定福利費は、人数分の健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料の事業主負担分を算出し、その2ヶ月分を計上します。

【厚生福利費】とは、法定福利費に含まれない費用が、法定外福利費となります。法定外福利費のみを指して、狭義で「福利厚生費」と呼ぶ場合もあります。

燃料費

燃料費は、配置予定車両の月間総走行距離を合算して燃費で割ったものに、1リットルあたりのガソリン単価をかけて2ヶ月分算出します。

※例えば、車両1台あたりの月間総走行距離予測:600km×車両数5台=3,000km
1リットルあたりの燃費が6リットル/kmでガソリン単価(1リットル)が@100円を想定すると、

3000/6=500リットルのガソリンが必要になるため、500×@100=50,000円

これを2ヶ月分で計上することで、50,000×2ヶ月分=100,000円 となります。

「油脂費」は燃料費の3%を計上しますので、この例だと、100,000×0.03=3,000円となります

修繕費

運送業に使用する事業用自動車を維持するために必要な修繕費の2ヶ月分を計上します。この「修繕費」には、外注修繕費と自家修繕費・部品費計とタイヤ・チューブ費の合計になります。

タイヤ・チューブ費の計上方法ですが、1万kmでタイヤ交換をすると予測し、車両1台(タイヤ6本)の月間走行距離が850kmの場合を考えます。この場合は、年間で約10,000kmを走行することになります。すなわち、1年間でタイヤを6本変えることになるため、2ヶ月で計算上は1本変えることになります。これをタイヤの単価と掛け算をすることにより、計上します。

車両費

一括購入の場合は取得価格全額、分割購入の場合は頭金+6ヶ月分の割賦金を記載します。リースの場合については、6ヶ月分のリース料計上します。

施設購入料・使用料

営業所、車庫等の事業に使う建物を購入する場合には、土地建物の取得価格です。ただし、分割払いで購入する場合は、頭金と1年分の返済費用で計算します。

また賃貸の場合は、1年分の賃借料と敷金などで計算します。

保険料

自賠責保険料または自賠責共済掛金と任意保険料または交通共済の掛金の1年分(対人無制限・対物200万円以上で賠償できる保険に加入しなければいけません。)をそれぞれ計上します。危険物を取扱う運送の場合は、その危険物に対応する賠償責任保険料の1年分を別途用意する必要があります。

各種税

車両積載量・車両総重量に応じて支払う1年分の自動車税と自動車重量税を記載します。自動車を取得した者に課される環境性能割(取得税)を計上します。

登録免許税

運送業許可取得時に必要な登録免許税12万円を計上します。

その他の費用

その他の経費には、旅費、会費議、水道光熱費、通信費、運搬費、図書費、印刷費広告宣伝費などが含まれます。その他経費は2ヶ月分の計上となっています。

資金の調達方法及び調達資金の挙証について

残高証明書は許可申請会社名義の銀行口座のものが必要になりますので、法人の場合は個人名義の口座だと「自己資金」として判断してくれません。銀行口座は複数であっても構いませんが、全ての口座の残高証明書が必要になります。

預貯金額のほか、流動資産の計上欄がありますが、調達資金は金融機関の発行する残高証明書で証明をするため、記載は不要です。

また、地域によっては金融機関などが発行した「融資証明書」を残高証明書とみなし、調達資金合計に計上することが可能です。融資証明書の額は「その他」に記載します。

まとめ

今回は運送業許可の種類と許可申請時に満たす必要がある資金要件についてそれぞれ解説致しました。運送業許可を取得するためには、メインとなる貨物自動車運送事業法、道路運送法とそれにまつわる公示や施行規則の他に、都市計画法、消防法、農地法、建築基準法などが複雑に絡み合うため、これらの法律に定められた基準をクリアしなければ申請には至りません。

運送業許可に関して何かご不明な点などございましたら、専門家である行政書士までお気軽にお問い合わせください。