運送業を始める手段として、新規で運送業許可を取得する方法以外に「営業譲渡」というものが存在します。運送業(一般貨物自動車運送事業)許可は、営業許可だけを譲り渡し・譲り受けをすることができます。
新規に運送業許可を取得するためには、煩雑なプロセスを進めていく必要があることをお伝えしました。営業譲渡という手段で運送業を行うに当たって、場合によってはメリットになることも多いです
本記事では、営業譲渡に伴うメリット・デメリットについてそれぞれ解説していきます。是非ご確認ください!
運送業許可の営業譲渡とは?

運送業を始めるには「一般貨物自動車運送事業許可(一般的に言う運送業許可)」を取得する必要があります。
これに対して、運送業許可の営業権譲渡とは既に許可を持っている個人や法人から営業権(運送業許可)を譲り受けることを指します。しかし、これについては無制限に許容されるわけではなく、国土交通省の認可を受ける必要があります。
譲受側の運送業営業所を管轄する地方運輸支局に「一般自動車運送事業許可の譲渡譲受認可申請」を行い、認可を受けることで運送業許可の営業譲渡が完了します。
※営業所を複数持っている場合、一部の営業所の営業権だけを他の個人や会社に譲渡することはできません。全ての営業権の譲渡が必要です。
貨物自動車運送事業施行規則第17条
一般貨物自動車運送事業の譲渡し及び譲受けの認可を申請しようとする者は、次に掲げる事項を記載し、かつ、当事者が連署した事業の譲渡譲受認可申請書を提出しなければならない。
一.譲渡人及び譲受人の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二.譲渡し及び譲受けの価格
三.譲渡し及び譲受けの予定日
四.譲渡し及び譲受けを必要とする理由
運送業許可(営業権)を譲渡譲受するメリットとデメリット
実は、譲渡譲受に伴う認可審査の際に、新規に許可を取得する場合と同じ要件が課されることになります。譲渡譲受でも同じ要件が課されるのであれば、新規で許可申請をしたほうが良いと考える方も多いのではないしょうか。
譲渡譲受で得ることができるメリットとデメリットを考慮して、メリットが多ければ譲渡譲受を行う、デメリットが多ければ新規許可を得る、と参考にしてください。
登録免許税がかからない(メリット)
新規で許可申請をする際には登録免許税(12万円)が必要になりますが、譲渡譲受の際は登録免許税がかかりません。メリットであると言えます。
譲渡会社から資源を譲ってもらえる可能性がある(メリット)

譲渡譲受を利用すれば、車両・土地・建物を安価で譲り受けることができたり、従業員・取引先をそのまま引き継げることもあります。手続きがスムーズになることが多いです。後継者不足の問題等、事業承継を目的とした譲渡譲受が増えています。
審査期間が短い(メリット/デメリット)
新規で運送業許可を取得する場合は、申請から許可取得まで約5ヶ月の期間を要します。これに対して、譲渡譲受の場合は、申請から認可まで約3ヶ月とされています。もっとも、譲渡人との交渉に時間がかかるため、実際に要する期間はケースによります。お互いに不利益にならないように利益を求めるため、衝突することがあります。
行政処分を承継する(デメリット)
譲渡会社がこれまでに行政処分を受けていないかどうかを、必ず確認しておきましょう。仮に行政処分を受けていた場合は、譲受側はそれも一緒に引き継ぐことになります。
行政処分があった際に違反点数をつけられることになるのですが、譲受側はこの違反点数を引き継ぐことになります。違反点数が再度つけられると事業停止/許可取り消しになってしまうこともありうるため、注意が必要です。
運送業許可の譲渡譲受(営業権譲渡)が推奨されるケース

個人事業から法人化する際(法人成り)、譲渡譲受を利用すれば、営業所や車庫、車両などをそのまま引き継げるため、手続きがスムーズになります。この場合は必ず「一般自動車運送事業許可の譲渡譲受認可申請」を行う必要があります。
まとめ
本記事では、譲渡譲受認可申請について解説をさせていただきました。新規許可申請と比べて、譲渡譲受の手続き上のメリットはいくつかありますが、結局法令試験は受けなくてはなりません。また、譲渡人との交渉がスムーズにできるかが非常に重要です。
ご自身の状況に合わせて、どちらの申請を行うのかを検討してみてください。
最後に

運送業許可を取得するためには、メインとなる貨物自動車運送事業法、道路運送法とそれにまつわる公示や施行規則の他に、都市計画法、消防法、農地法、建築基準法などが複雑に絡み合うため、これらの法律に定められた基準をクリアしなければ申請には至りません。
運送業許可に関して何かご不明な点などございましたら、専門家である行政書士までお気軽にお問い合わせください。


