運送業を始めるためには、法律で定められた要件を満たす必要があり許可を取得する必要があります。許可申請をしてから運輸局が審査を完了するまでに最短でも5ヶ月程度は期間を要します。形式的な要件以外にも、採用活動(人的要件)の部分では、運行管理者や整備管理者を見つけるのに時間がかかることも予想されます。
本記事では、運輸開始までに必要な期間について手続き全体の流れを踏まえながら解説させていただきます。
運送業許可取得までの流れ

運送業の許可を取得する場合の標準的な流れは以下のようなものになります。大前提として運送業を「個人事業」として始めるのか「法人」として始めるのかで異なります。
会社設立の手続き(法人化する場合)は定款認証、設立の登記等でも期間を要します。法人名や決算月を決め、必要な書類を収集し、法務局へ提出する必要があります。
営業所、休憩所、車庫の確保
営業所や車庫についても要件が細かく定められています。車庫については道路の幅員や交通安全上問題がないか等を検討することが重要です。
運行管理者、整備管理者等の候補者の確保

運送業許可を取得するためには、最低でも運転者は5人以上と運行管理者1人以上が必要になります。申請から許可取得までおおよそ3ヶ月〜4ヶ月の期間を要します。申請の時点では必ずしもすべての運転者を雇用している必要はありません。
【運送業許可申請】必要書類の準備
許可申請に必要な書類は10種類を超えます。これらを作成・収集するのにも期間を要します。
法令試験の受験

個人であれば個人事業主、法人であれば運送事業にかかわる常勤の役員のうちの1人が受験します。申請者は法令試験を受験し、合格する必要があります。
2度目の残高証明書の取得
運送業許可申請受付から2ヶ月後を目途に、営業所を管轄する地方運輸局から2度目の残高証明書の提出通知が来ます。残高証明書は、通知書の発行日から2週間以内のものを取得する必要があります。
許可証の交付
すべての審査が完了すると、許可取得の通知が入り、交付式に参加することになります。交付式は2時間ほどで、運輸開始後の運営上の注意点などの説明が行われます。
運送業許可取得後の流れ

先程のステップを経て、ようやく運送業を開始することができます。運送業は、運送業許可を取得後にすぐに事業を開始できるわけではありません。この他にも必要な書類の提出や、その他の作業をすべて完了して初めて開始することができます。
登録免許税の納付
交付式の際に、登録免許税納付書と登録免許税領収証書届出書が配布されます。登録免許税の納付は許可取得日から1ヶ月以内に済ませるように規定されています。
運行管理者選任届と整備管理者選任届の提出/車両の購入等
社会保険・労働保険の加入と36協定の締結及び就業規則の提出

役員を含む従業員は社会保険に、従業員は労働保険に加入します。加えて、従業員が時間外勤務(残業や休日出勤)を行うことができるように36協定を締結して労働基準監督署に提出しておきましょう。常時10人以上の従業員を雇用する場合は、就業規則も必要になります。
運輸開始前届の提出
添付書類を揃えて、営業所管轄の運輸支局に提出します。
車両登録
運輸開始前届の提出が終わると、運輸支局で営業用ナンバー(緑ナンバー)に変更するための「自動車運送事業用自動車等連絡書」が交付されます。これを持参の上、営業所管轄の陸運局にて手続きを行いましょう。後日必要となる新車検証の写しを取ります。この際に、自動車任意保険の加入を済ませましょう。営業用車両として加入しなおす場合は、基本的に新規加入となります。
運賃料金設定届・運輸開始届の提出
運送事業で使用する運賃料金表と運賃料金設定届を営業所所轄の運輸支局に提出します。これと同時に、一般貨物自動車運送事業の運輸開始届を提出します。
運転経歴証明の取り寄せ(適性診断・健康診断の受診等)
自動車安全運転センターから運転者全員の運転経歴証明を取り寄せます。また、運輸開始までに適性診断・健康診断の受診結果を提出することは義務付けれていませんが、受診義務はあるため早い段階で受診を済ませておきましょう。
トラック運送業開始までに必要な期間の目安

上記のようなステップを踏んでトラック運送業を開始するまでには、一体どのくらいの期間が必要になるのでしょうか。実際に準備を開始してから運輸開始まで6ヶ月~1年程度という方が圧倒的に多いです。物件や車両の確保に時間がかかってしまうと、許可取得までの期間が長期化します。
最後に
これら一連の流れが終わると、少し一息つきたいものです。しかし、ここからが本当のスタートです。売上が上がるか、ドライバーがやめないか、給与体系をどのようにすればよいのか等様々な問題が生じます。
許可取得後には帳票類の管理をしておく必要があります。運送業は一般業と異なり、運転者が車庫を出た後の労働に対する管理は容易ではありません。そのため、安全管理に対する業務はすべて帳票類で管理することになります。
それでも、新規参入されるお客様を弊所では是非お力になりたいと考えております。是非ご相談ください!
まとめ

運送業許可を取得するためには、メインとなる貨物自動車運送事業法、道路運送法とそれにまつわる公示や施行規則の他に、都市計画法、消防法、農地法、建築基準法などが複雑に絡み合うため、これらの法律に定められた基準をクリアしなければ申請には至りません。
運送業許可に関して何かご不明な点などございましたら、専門家である行政書士までお気軽にお問い合わせください。




