トラック等の運送業(緑ナンバー)をするためには許可を取得する必要があります。正式には「一般/特定貨物自動車運送事業許可」と言います。これらの許可を取るためには、大きく分けて「人」「物」「資金」に関する基準をクリアしなければなりません。
本記事では、「物」の要件について解説をしていきます。「物」には、営業所や休憩施設、睡眠施設・車庫そして車両の要件等が含まれますので、ぜひ確認をしてください!
「人」「資金」に関する内容については、こちらの記事にて解説をしておりますので是非確認をしてください!
運送業許可場所の要件について

運送業許可取得に関する、物の要件とは営業所、休憩施設、睡眠施設及び車庫に関する規定のこと指します。運送業許可を取得するのに必要となる施設に関しては、細部にわたり許可基準が設けられています。
土地の登記簿謄本や公図の取得、営業所を管轄する市町村役場の都市計画法や建築基準法などを担当する部署への確認を忘れずにする必要もあります。
営業所について
都市計画法に基づく基準
原則として、都市計画法上の区域区分が「市街化調整区域」でないことを確認しましょう。また、都市計画法で規定されている以下の区域に該当する場合も原則として、運送業の営業所を設置することができません。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 一定の条件を満たす第二種中高層住居専用地域
- 一定の条件を満たす第一種住居地域
農地法、都市計画法、建築基準法に基づく基準
営業所所在地の地目(不動産登記法による)が田や畑(農地)の場合は、営業所として申請することができません。農地転用後でなければ、運送業許可書は交付されません。農地転用を伴う場合は、許可取得に時間を要するため、申請のスケジュールが長くなることをご留意ください。
また、営業所とする建築物が現在の建築基準法、消防法に抵触しないかを市町村役場の担当課に確認してください。
適切な使用権限があること

運送業許可の申請者が、営業所とする建物を使用する権利があることの証明をします。
自己所有であれば建物登記簿謄本や土地登記簿謄本で自己所有であることを証明します。営業所を賃貸借契約に基づき利用する場合は、契約期間と契約の更新方法に注意をしてください。適切な使用権限があるといえるためには「期間満了後は自動更新である」旨の記載が必要です。契約期間が1年未満の場合でも、期間満了時に自動更新する旨の記載がある場合は適切な使用権限があるものとみなします。
また、営業所の広さとして、電話、パソコン、プリンター、事務机やキャビネットなど、運送業事務を行う上で必要な備え付けができる広さでなければ、営業所としては認められませんのでご注意ください。
営業所と車庫の距離について
営業所と車庫が併設できない場合は、2点間が直線距離の10km以内(地域によって5kmなどと異なります)にあることが要件となります。営業所と車庫は原則として併設されていなければなりませんが、一定の直線距離内であれば離れていても問題ありません。
適正な運行管理や運行管理者・運転者の営業所・車庫間を移動する負担を考慮すると、なるべく近い方が望ましいと言えます。
休憩施設・睡眠施設について

運送業の許可を取るためには運転者の休憩・睡眠施設も設置する必要があります。
休憩施設については、広さの規定はありませんが、運転者が休憩を取るのに必要な机や椅子を配置することができる広さを備えることは必要です。
睡眠施設は、1人あたり2.5平方メートルの広さを確保する必要があります。睡眠施設については必須事項ではありませんが、運転者が帰宅すると8時間以上の休息時間が取れないような運行があると予測される場合には設置しなければなりません。
休憩施設と睡眠施設は同じ場所にあっても構いませんが、「睡眠施設」を兼ねることになるため、机や椅子などに加えて、ベッドや布団が置ける広さの確保が必要になります。
営業所と休憩施設・睡眠施設を1つの部屋に設けることもできます。その場合はパーティーションで区切る必要があります。
車庫について

運送業の許可を取得するためには車庫が必要になります。車庫は営業所とは異なり、市街化調整区域でも、運送業の車庫として使用可能です。
また、交通安全上支障がない場所であること等の規定が定められています。
・使用する車両を容易に収容できる面積があること
・営業所から直線距離で10km以内(地域により異なる)にあること
・出入口前面道路に通学路などの交通規制がないこと
・5m以内に交差点、曲がり角、急な坂がないこと
・出入口前面道路の幅員が使用する車両に対して適切であること(幅員証明書が取得できること)
・駐車場出入口の幅が基本的には6m以上、8m以下であること(地域により異なる)
「使用する車両を容易に収容できる面積があること」については、運送業に使用する車両が全て駐車できるスペースが必要になるため、車両と車両、車両と車庫の間にそれぞれ50cm以上の隙間を確保することが求められます。
また、車庫の前面道路の幅員についても要件が定められていて、車両制限令に抵触しないことが必要です
車庫については、上記のように多くの要件を満たさなければならず、車庫探しが難航することが予想されます。しっかりと運送業の車庫に使用できるのかの調査を行いながらスケジュールに余裕を持って探しましょう。
車両について
運送事業に使用する事業用自動車は、車検証の用途欄が「貨物」と記載された自動車が最低5台必要です。
用途が「貨物」であれば4ナンバーなどの小型車でも問題ありません。
また、運送業に使用する車両は、許可申請者が使用権限を持つことが求められます。運送業許可申請にあたり新たに法人を設立する場合で所有者が申請者個人の場合は、個人から法人の譲渡契約書等が必要になります。
車検証上の所有者または使用者の欄に許可申請者が記載されてあれば条件は満たしているので。リース車両でも問題無くトラック運送事業に使用することができます。リース車両の場合は所有者がリース会社、使用者が許可申請者になるからです。
許可申請時には現車がない場合であっても、既に車両が特定されていて、売買契約書やリース契約書等を提示することで使用権限があると判断されます。
まとめ

今回は運送業許可の種類と許可申請時に満たす必要がある物的要件についてそれぞれ解説致しました。運送業許可を取得するためには、メインとなる貨物自動車運送事業法、道路運送法とそれにまつわる公示や施行規則の他に、都市計画法、消防法、農地法、建築基準法などが複雑に絡み合うため、これらの法律に定められた基準をクリアしなければ申請には至りません。
運送業許可に関して何かご不明な点などございましたら、専門家である行政書士までお気軽にお問い合わせください。




